『十一代目團十郎と六代目歌右衛門』

『十一代目團十郎と六代目歌右衛門−悲劇の「神」と孤高の「女帝」』(幻冬舎新書)を読みました。

実は、この本は発売直後に書店をはしごして購入したのですが(最初に行った書店にはなく、2店目の書店で購入)、最初だけ読んで、しばらく積読状態。最近になって思いだし、一気に読んでしまいました。
まえがき(p.13)に、

…この本は、形式的には小説でもなければ、歴史書でも、論文でもなく、ドキュメンタリーでもなく、そのすべての要素を持つ。
 本書における、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」したという記述、あるいは「発言」については、すべて文献資料にあたったうえでのもので、その部分に創作はないが、人物の内面についてはすべて想像して書いた。また、完全な引用は文中で出典を記したが、それ以外の情報の典拠については巻末に参考文献一覧として揚げた。学術書ではないので、このようなスタイルをとらせていただいた。
 これはあくまで「物語」である。かつてこの国には、舞台芸術をめぐる熱い時代があった。その時代に生きた人々の物語だ。

とあるとおり、そまざまな文献にあたっているので、普通の歌舞伎本には載っていないようなエピソードがいろいろあります。私にとっては、戦後の歌舞伎史を知る良い手引書で、興味深いエピソードも多かったです。著者が想像して書いたとしている人物の内面については、もしかしたら、読む人によって、あるいは二人の舞台を実際に見た方々にとっては評価が分かれるところかもしれません。これらについては、おそらく、著者が歌舞伎評論家ではないから書くことができたことなのではないかと思います。
私が歌舞伎を観にいくようになったのは社会人になってからなので、かろうじて歌右衛門の舞台は何回か観ています。まだ歌舞伎初心者で、よくわからないこともありましたが、歌右衛門の舞台での存在感に圧倒されたことを覚えています。私が生まれる前に亡くなった十一代目團十郎の舞台は、当然、観ていません。
図書館に勤務している恩恵(?)で、初心者の頃、昼休みを利用して、書庫にもぐって歌舞伎関係の本や雑誌『演劇界』のバックナンバーを読みました。十一代目團十郎の写真集も、六代目歌右衛門の写真集も見ています。今では二人のことは資料からしか知ることができないのですが、この本を読んで、改めて花形として活躍していた頃の二人の舞台を観てみたい、できれば共演した舞台を、などと思ってしまった次第です。舞台映像とか、残っていないのでしょうか。