報告会「東日本大震災の復興支援−図書館支援に求められていること−」に参加しました(その1)

先週、7月13日(水)の午後に国立国会図書館東京本館で開催された、報告会「東日本大震災の復興支援−図書館支援に求められていること−」に参加しました。

 ■ 日時  2011年7月13日(水) 13:00〜17:00
 ■ 場所  国立国会図書館 東京本館 新館講堂


梅雨明けの暑い日で、国会図書館は節電中。(それでも、新館講堂は、涼しかったと思います。)東日本大震災の復興支援には関心を持っている方も多く、参加者は多かったです。
この報告会の状況は、Togetterのまとめなどがあります。そのうち、当日の配布資料などが公開されるのではないかと思います。
以下は、参加者の一人が、職場の報告作成用の個人メモをもとにまとめたものです。私自身が聞きとってメモした範囲の内容になりますので、漏れやニュアンスが違う点があるかもしれませんが、ご了承ください。また、今回は報告の部分、「1 開会挨拶」から「3 支援の取組・過去の被災図書館から」になります。パネルディスカッションの部分の個人メモのまとめは、「その2」として公開したいと思っています。


1 開会挨拶(国立国会図書館長 長尾真)

  • 6月6日に、都道府県立図書館長、政令指定都市図書館長とのディスカッションを行なったが、被災地の図書館が必要とする支援と、支援したい側の思いにギャップがあるように思った。ギャップを埋めるには、館種を越えた横の連絡網を作り、必要な所に必要な支援を行なっていくことが大事だと思う。図書館界がうまく連絡をとりながら、工夫をしていきたい。
  • 今回の復興支援は、長い年月がかかることが想定される。今はできなくても、2年後、3年後に役立つ支援もある。

2 被災地図書館からの報告


(1) 岩手県立図書館(酒井久美子館長)
     岩手県立図書館  http://www.library.pref.iwate.jp/index2.html

  • 岩手県立図書館は、盛岡駅前の複合施設の中にある。地震発生当時は100人くらいの利用者がいたが、全員無事だった。
  • 岩手県内の34市町村に56の図書館がある。津波の被害の大きい沿岸部の図書館は、開館に見通しが立たない。
  • 被災地を訪問してわかったこと
    • 被害状況は1つではない。支援の方法も1つではない。
    • 市町村の復旧・復興過程を注視つつ、各段階での図書館支援が必要である。(資料の救済・修復、研修等から図書館の再建・復興までの長期に支援が必要である。)
    • まち・図書館・職員 どれが欠けても復興はできない。
  • 県立図書館の被災地支援
    • 身分証が無くても、利用者登録可。
    • 津波による資料の亡失については、弁償を求めない。
    • 避難所での読み聞かせ。
    • ホームページによる、震災情報の発信。
  • 今後の支援
    • BMの運行、セット貸出の実施
    • 研修会の実施(図書の修復、ビジネス支援など)
    • 他団体との連携等:公益社団法人シャンティ国際ボランティア会*1、遠野文化研究センター*2
  • 支援に対する要望
    • 支援する側と支援される側とのマッチングがうまくいかないことが見受けられることから、どこを窓口にするかも含めたシステム作り
    • 壊滅的な被害を受けた図書館もあることから、図書館の再建・復興までの長期的な支援策の継続性
    • これからの図書館像をどう考えるか、そしてそのことに基づいた図書館の復興・再生支援
    • 文化による復興支援の重要性
  • 平泉が世界遺産に登録されたので、ぜひ岩手においでください!*3

(2) 宮城県図書館(和賀修治企画管理部長)
    宮城県図書館   http://www.library.pref.miyagi.jp/

  • 最初の揺れで身の安全の確保を行なったため、館内にいた約350名の利用者への被害はなかった。
  • 図書館資料の約105万点がすべて落下した。職員の手により元に戻したが、4月7日の余震で、約5割が落下した。
  • ガソリンの入手が困難になり、被災地になかなかいけなかった。職員も通勤できなかった。
  • 県内の図書館の被害が大きかったところは、南三陸町図書館が津波ですべて流出、女川町生涯教育センター(公民館図書室)が津波で全壊した。津波の被災地であっても、図書館が高台に設置されている所が多く、浸水を免れたところが多い。地震そのものの被害により、震災以前のサービス再開が困難な図書館が多い。
  • 「震災文庫」を設立し、震災関係の収集を行う。デジタルアーカイブの重要性も再認識した。アーカイブの構築と積極的な活用を考えていく必要がある。
  • 県内図書館への支援について。壊滅的な被害を受けた南三陸町へは、職員が週1、2回訪問し、企画運営について打合せを行っているほか、学校図書館への資料貸出サービスも行っている。
  • 今後も各種団体と連携をとりながら、県内の被災地図書館の支援を行なっていきたい。

支援の取組・過去の被災図書館から


(1) 国立国会図書館(武藤寿行 主題情報部長)

  • 国会図書館東京本館でも、本が約180万冊、落下した。
  • 館内に被災地支援の作業部会を設置し、被災地支援及び被災地復興について、国会図書館ができることを検討・実施している。

    国立国会図書館 東日本大震災復興支援ページ http://www.ndl.go.jp/jp/news/support.html

  • 震災関連のウェブサイトの収集。
  • これまでの取組を通して見えてきたこと
    • 被災地のニーズとのマッチングが難しい。
    • 他の図書館に対する復旧・復興支援体制が未整備 → ネットワークの構築が必要?
    • 震災時の復旧・事業継続計画の必要性。今までの防災計画では不十分だった。
  • 今後の取組
    • 被災地のニーズの把握と情報の共有化を図る
    • 中長期的な復興支援策の検討(復興支援が長期化すると思われるため)。
    • 東日本大震災の記録の保存とアーカイブの構築に向けた関係機関との連携・協力が必要。

(2) 文部科学省(平川康弘 生涯学習政策局社会教育課課長補佐)
   東日本大震災関連情報(文部科学省  http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/index.htm

  • 公立社会教育施設災害復旧費補助金について、第一次補正予算で87億円がついた。
  • これは、東日本大震災により被災した、公立社会教育施設の施設・整備等の復旧に対する工事費等に対して、国がその2/3を補助するというもの。図書館の本も、補助対象に含まれる。
  • 被害状況と税収の状況によって指定する。現在、9県148市町村が対象となっているが、今後増える可能性がある。
  • 約700施設から申請が来る予定で、その内、図書館は約70館。災害復旧の計画を提出していただき、現地査定を経て、支給することになる。予算の交付については、早急に手続きを取るようにしたい。
  • 国庫補助の残り1/3については起債が可能であり、実際の市町村の負担は1.7%くらいか?
  • 被災児童・生徒等がより必要な支援を受けやすくするため、被災者のニーズと提供可能な支援を相互に一覧できる「東日本大震災子どもの学び支援ポータルサイト」を開設した。

   東日本大震災子どもの学び支援ポータルサイト  http://manabishien.mext.go.jp/



(3) 社団法人日本図書館協会(松岡要 常務理事・事務局長)
   社団法人日本図書館協会  http://www.jla.or.jp/

  • 本日、本の修復の講習会を行なっている。遠方からの参加者もいる。
  • 東北地方は、図書館の設置率が低く、1図書館当たりの可住地面積も広い。単なる復旧・復興ではなく、図書館サービスの整備を考えていくべきではないか。
  • 被災地の図書館には迷惑がられたが、日図協として、発生当日の状況確認を行った。図書館は、不特定多数のあらゆる年齢層が利用する施設である。建物の安全性の面から、例えば、ガラスを多用したデザイン重視の建物はどうなのか?また、図書館の利用者の安全確保のため、きちんと利用者を誘導できたか?対応の計画が作成されていたのか?
  • 本の落下防止の機能がある書架は、地震の揺れ等により、ねじれなどが生じて使えなくなった。むしろ、本が落下したほうが安全である。*4
  • 図書館サービスの再開のための復旧、復興に止まることなく、今図書館に求められているサービス、事業の実現を図るための図書館進行計画を立案するしくみを作る。
  • 被災地への継続的な司書の派遣も必要。

(4) saveMLAK(岡本真 saveMLAKプロジェクトリーダー)
   saveMLAK   http://savemlak.jp/wiki/SaveMLAK

  • saveMLAKには、現在、約300名が参加している。(「会場に来ている人で、saveMLAKに参加している人は?」の問いかけに、7、8人が挙手。)
  • saveMLAKは、Museam(博物館、美術館)、Library(図書館)、Archives(文書館)、Kominkan(公民館)の、4つの社会教育施設を救援するのが目的で、情報支援、間接支援の活動をしている。ネットワーク的な組織なので、迅速かつ柔軟な対応ができる。
  • 「御用聞き」(=被災地に行って、被災者の話を聞くこと)で、被災者が必要とする支援を知り、自分たちができることを詰めることが重要。様々な支援が混線し、支援を受ける側が混乱している。「できること」と「すべきこと」は別。
  • この原因は、「平時の備えが欠如していた」ことによる。
  • 宮城県の例にもあったように、対向支援は有効。特定の自治体同士の図書館が連携し、何かあった時は支援しあうということ。
  • 今後のためにも、支援の典拠(出典)としての被災状況を記録しておくことが重要。
  • また、図書館サービスのための緊急時ネットワークを構築しておくことも重要。

(5) 財団法人図書館振興財団石川徹也 常務理事)
   財団法人図書館振興財団  http://www.toshokanshinko.or.jp/index.htm

  • 図書館振興財団は、平成20年12月11日、発足。
  • 日々の支援状況は、ホームページで公開しているので、そちらを参考にして欲しい。
  • 支援金として1億円を用意したが、上限に達したため、6月20日から、支援要請の募集を中断している。平成23年度の助成事業の一部を中止し、被災地支援に回している。50数館へ支援を行なう予定。
  • BMの支援要請は多いが、BMのリース代は財団が持ち、被災地へ貸与する形になるため、なかなか難しい。
  • 被災地支援事業をどう継続していくかが、これからの課題。

(6) 〈大震災〉出版対策本部(高田俊哉 広報委員(筑摩書房))
   <大震災>出版対策センター  http://www.shuppan-taisaku.jp/

  • 「<大震災>出版対策本部」には、出版社がほとんど参加している。取次や書店の団体とも連携している。最初は、紙やインクの不足など、被災状況の情報を共有する場だったが、出版による読書環境の復活、出版流通の復活、心の復活を目指す被災地の支援へと活動内容が変わった。
  • これまでの支援の内容としては、以下のものがある。
    • 120万冊の本を収集して、被災地へ送った。
    • 図書カードを被災地に送った。
    • 約30の医学系等の出版社が、自社のホームページで本を公開。
  • 公共図書館も、場所によって被害の状況が異なる。例えば、大船渡市の図書館は、回線の断線でシステムが動かなくなったが、建物や本は大丈夫だった。図書館の復興には、様々のインフラの整備が必要。
  • 合わせて、被災地の書店も応援して行きたいと考えている。

(7) 神戸市立図書館(松永憲明 主幹)
   神戸市立図書館  http://www.city.kobe.lg.jp/information/institution/institution/library/top/index.html

  • 阪神淡路大震災は、都市の直下型地震で、亡くなった方の約7割が圧死。
  • 図書館の被害としては、資料の落下、建物(特に古い建物)の破損、地盤沈下の影響など。ただし、地域によって図書館の被害状況も異なり、温度差があった。被害のなかった図書館では、地震発生直後から、住民からの開館の要望があった。図書館が避難所になってしまったところもあった。
  • 被災地の支援には、3つの段階がある。

    第1段階(直後):生活物資(水、食料、衣料)の提供
    第2段階(救援活動への支援):被災者支援活動の援助
    第3段階(復興・自立への援助):ノウハウの提供

  • 図書館職員も市の職員として支援にあたったため、職員が図書館におらず、図書館機能は停止した。学校の再開が最優先だった。そのような中でも、避難所への配本や読み聞かせなど、図書館独自の活動も行なった。
  • 救援図書として12万冊が送られてきたが、避難所へ約3万冊を配本し、残り約9万冊はボランティア団体へ渡した。
  • 落下した本は、職員が支援業務の合間に戻した。被害の少なかった図書館から順次開館していき、11月に全館開館。ちょうど、図書館システムの入替時期で、システムが入っていない図書館もあった。新館も2館開館した年。とても忙しい年だった。
  • 被災者支援コーナーの設置、震災関連の資料の収集を行った。収集にあたっては、被害のなかった元町の書店に、図書館が普段収集しない週刊誌等の取置をお願いした。
  • 神戸市の被災地支援は、先に数名の職員が現地に行って状況確認、ニーズの把握を行った上で職員を派遣し、支援活動を行っている。
  • 阪神淡路大震災の時と同じことは、支援する側と支援を受ける側のコミュニケーションがとれていないこと。ノウハウが活かされていない。違うのは、被災地支援の動きが長く続いていること。これは、首都圏に近いから?

*1:http://sva.or.jp/index.html

*2:http://www.city.tono.iwate.jp/index.cfm/1,18008,162,html

*3:平泉観光協会 http://hiraizumi.or.jp/

*4:日本海中部地震が起こった日、書店にいて、落下してきた本でけがをしそうになった経験があります。地震の際は、利用者さんには、書架から離れるよう案内するのが、図書館職員には必要だと思います。