『壺中の回廊』

壺中の回廊

壺中の回廊


松井今朝子著『壺中の回廊』を読みました。
この小説は、昭和5年の、関東大震災から復興した東京が舞台です。関東大震災で東京の街が大きく変わったことは、地域資料担当になって、レファレンスや展示等で資料を見る機会が増えたことで再認識しました。この小説の中には、昭和5年に行われた「復興祭」も出てきます。
事件の舞台となっている木挽座のモデルは、歌舞伎座でしょう。「仮名手本忠臣蔵」の上演中に起こった殺人事件。登場人物は、歌舞伎役者のほか、歌舞伎に関わる人が多く、歌舞伎ファンには楽屋裏を覗いているような気分になります。歌舞伎役者についても、「女帝」として旧劇界(=歌舞伎)に君臨する立女形、東洋の「ヴァレンティノ」と呼ばれる美男の名優など、登場人物は昭和初期に活躍いた役者さんがモデルだそうで*1、読んでいて「もしかして、この人のモデルはあの役者さん?」と想像しながら読んでいました。また、木挽座(歌舞伎)と新劇との対比や、昭和初めの頃の歌舞伎の状況や風俗なども知ることができ、面白かったです。
歌舞伎ファンの方に、お薦めの本です。


そういえば、11月、12月の歌舞伎座は、「仮名手本忠臣蔵」の通しです。人気の演目で、またか、という気がするものの、この顔合わせではどんな舞台を見せてくるのか楽しみで、劇場に足を運ぶことになります。ただし、残念なのが、片岡仁左衛門の休演*2と、坂東三津五郎の休演です*3。特に、片岡仁左衛門は、今月の舞台がとても良かったので…。代役を勤める役者も大変だとは思いますが、充実した舞台を見せてくれることを楽しみにしています。