『書いて生きていく プロ文章論』

書いて生きていく プロ文章論

書いて生きていく プロ文章論


前回のエントリーで紹介した『職業、ブックライター。』の著者、上阪徹さんの最初の自著がミシマ社刊の『書いて生きていく プロ文章論』。この2冊を並べてみたら、出版社が違うのに、本の装丁がほとんど同じであることにびっくりしてしまいました。
『職業、ブックライター。』によると*1、「文章の技術について書いて欲しい。」というオーダーを受けて、フリーのライターでもあった若い担当編集者に向けて、自分なりの文章に向かう「心得」を書いた本とのことです。この本で著者が言いたいことは、『職業、ブックライター。』でも述べられているので、著者の文章の書き方というか、ライターとしての仕事のスタンスが、変わっていないのだと思いました。例えば、次のような箇所などが該当していると思います。

例えば、ただ感想や自分の印象、思いを書き連ねたところで、どれほどの思いなのかは、なかなか伝わりません。しかし、具体的なエピソードが語られ、その上で思いを加えたものであるならば、読み手にはぐっと説得力が高まります。怒りの文章なら、「怒っている」と書かなくても、怒るに至った事実を連ねるだけで「怒っている」ということを伝えることができます。それこそ読み手は、むしろそのほうが書き手と同じ感覚で怒りを感じてくれるはずなのです。(p.52〜53)

文章を書く目的があって、対象となるべき読んでほしいターゲットがいて、そのターゲットに読んでもらえるような文章にしなければならない。そう思っているのです。自分本位に書きたいことを決めるのではなく、ターゲットを意識して「何を書くか」の優先順位づけを行うべきだと思うのです。(p.59〜60)

つまり、何度も読み返すことは、自分のリズムや、自分の文章を確立させていくことにつながる、ということです。何が心地よい文章なのか、自分自身でチェックしていくことができるわけです。もし、心地がよくないのであれば、それは修正すべきだ、ということに気づけます。だからこそ、徹底的に読み返しを進めてみてほしいと思うのです。
書いたあとに、さっと読み返してみる。それは書いているうちに熱かった気持ちが、冷静になれる瞬間でもあります。だからこそ、見えてくるものがたくさんあるのです。(p.98)


そして、インタビューの際は、時間に遅れない、最初の挨拶をきちんと行う、相手のこ顔をきちんと見る、知ったかぶりをしない(自分で調べられるかぎり、調べてみてから取材にのぞむ)など、ライターだけではなく、社会人として仕事をする上での基本的なことも述べられています。


今回、私が、ひっかかったのは、次の箇所でした。

私が特に強調しておきたいのは、外のまったく違う仕事をしている人たちにこそ、ぜひ自分の仕事について知ってもらっておいたほうがいい、ということです。(p.263)


先週は、ある会議の資料を作るのに四苦八苦した週でした。自分の担当している業務*2について、図書館の外の人(=行政系の人たち)にどうすれば伝わるか。図書館用語を使わず、なるべく相手のわかる言葉で説明する。具体的なエピソード(レファレンスの事例)を盛り込む。・・・何度もダメ出しを受けながら、資料を作成しました。もちろん、会議の資料なので基本的なフォーマットがあり、その枠内におさめることが大前提となります。結果、業務すべてを詳細に説明することは絶対に無理なので、伝えたいことを絞って、まずは、図書館でこのようなことをやっていることを知ってもらえれば、というものになりました。つまり、この本でも繰り返し述べられている、「ターゲットを意識した文章を書くこと」が求めれたのです。

仕事の中では、様々な形で文章を書く機会があります。そして、そのたびに、「書くこと」の難しさを実感します。
『書いて生きていく プロ文章論』も『職業、ブックライター。』も、著者なりの文章を書くコツやノウハウが繰り返し述べられています。このコツやノウハウは、ライターの方だけではなく、仕事で文章を書くことがある人にも役立つものだと思いました。

*1:p.119〜122「自分の本を作るときの、素材の用意の仕方」など

*2:「庁内サービス」、と言われている業務