『つながる図書館』


今日の日本経済新聞の読書のページ(21面)下段の広告欄に、ちくま新書の広告も大きく載っていて、今月の新刊であるこの本『つながる図書館』も載っていました。


この本は、著者が、話題となっている図書館や図書館関係者などを取材したことをまとめた本です。この本で紹介されている全国各地の公共図書館の取り組み、動向などは、おそらく、図書館関係の人は、すべて知っていることだと思いますが、公共図書館をめぐる最近の動向を再確認することができるので、やはり、公共図書館系の人は、読んでおいた方が良いと思います。*1


この本のタイトルにある「つながる」ということ。
この本の中では、主に、地域(コミュニティ)の中で、図書館はどう地域とそこに住む人とつながっていくかが述べられています。公共図書館が「つながる」先は、地域はもちろんですが、行政、学校、他の社会教育施設、他の自治体の図書館、大学図書館専門図書館などほかの館種の図書館など、たくさんあると思います。これからの公共図書館は、積極的に「つながる」ことが求められているのではないか。そして、図書館の中の人も、図書館の中の司書だけではなく、事務系職員、他の図書館の職員や地域の人々、本に関わる人(書店や出版社の方)など、様々な人たちと「つながる」こと(=人脈)が求められているのではないか。…
この本を読み終わって、「つながる」ことが、現在、図書館に求められていることではないか、と思いました。現状維持ではなく、自らが動いて攻めていくこと。頭ではわかっていても、実際にはなかなか難しいです。


千代田図書館長で国立国会図書館の柳与志夫さんは、

公共機関は、誰にとっても使いやすいサービスを目指しがちですが、ともすれば誰にとっても使いにくいサービスになってしまう。企業では当たり前であるセグメンテーションをきちんと設定して、ひとつひとつそれに合ったサービスを提供すれば、結果として誰にでも合ったものとなります。一律に、誰にでも同じサービスを提供することとは違う。(p.38)

これまでの図書館は自分が止まっていて、まわりが動いていると思っていました。まわりとは、知識情報の世界です。色々な情報知識基盤を担う施設、機関、企業は他にもあるのに、図書館はまったく孤立していた。特に、最も連携しなければならない出版社と対立している。それでは発展はないです。自分中心の天動説ではなく、世界の一部として自分もまわっているという地動説に意識を変えて活動していかないといけない、知識情報を収集して、誰でもアクセスできて、仕事や生活を豊かにすることに役立つのが公共図書館です。(p.39)

というように、公共図書館の意識改革が必要なことを指摘しています。

また、伊万里市民図書館の古瀬館長は、

図書館は時代に応じて変えなければならない部分もあるし、変えてはならない部分もある。そこを踏まえた上で図書館に対するミッションを明確にしなければなりません。(p.136)

と、図書館としてのミッションの明確化、つまり、図書館としてどういう方向で図書館サービスを展開していくかが必要である、としています。つまり、その地域のニーズをきちんと把握し、それに対応した図書館サービスの提供、ということになると思います。

一方、TRCの谷一会長の

まず、図書館の力がずいぶん落ちていると感じました。財政力が落ちて職員が減る中で、名物司書がどんどん減っていった。臨時職員ばかり雇っている図書館が多い。それに伴って、利用者の方に図書館のサービスのことが伝わらなくなっている。ネットワークを利用して他の図書館からも本を借りられるとか、たくさんの素晴らしい地域資料があるとか、図書館本来の力が使いこなされていませんでした。(p.182)

という、「図書館は人が大事だ」というご指摘も、耳が痛かったり…。
いつの間にか、先輩職員が少なくなって、自分がベテランと呼ばれる立場になっていたという現実。そんな中で、難関を潜り抜けてきた優秀な若手司書に、自分が先輩職員の人たちから教わってきたことや、今まで図書館で働いてきて身に着けたことをどう伝えていくかが、自分にとって、ここ数年の課題となっています。


この本を通して、著者は公共図書館に対して応援メッセージを送るとともに、「それでは、公共図書館はこれからどうしますか?」と問いかけているのではないか、とも思いました。そのヒントは、案外身近にあり、自分で動いてみることで見つかるような気がします。

*1:ただし、一部、誤りと思われる箇所がありました。おそらく、著者が取材で話を伺った職員の話を引用していると思われるので、その職員の方の認識違いだと思いますが。