『本の「使い方」』


本好きで読書家と知られる著者、出口治明氏の本とのつきあい方が知りたくて、本書を手にしました。

 本がなくても死ぬことはありません。でも、本がなかったら、人生を楽しむことはできないでしょう。少なくとも、私はそう思います。(p.5)

著者は、より良い人生、より良い仕事、より良い生活を送るためには、教養が必要であり、もっとも効果的に教養を得られるツールである本のメリットを5つあげています。(p.32〜33)

(1)年百年も読み継がれたもの(古典)は当たりはずれが少ない
(2)コストと時間がかからない
(3)場所を選ばず、どこでも情報が手に入る
(4)時間軸と空間軸が圧倒的に広くて深い
(5)実体験にも勝るイメージが得られる


そして、

自分の仕事に関する勉強は、最低限、押さえておく。そのうえで、自分の好きなことを教養として学んでいけばいいと思います。(p.45)

と述べています。
文字系の情報源として、新聞、インターネット、本の特性を

 新聞・・・価値の序列を付けて、文脈を伝えるツール
 インターネット・・・速報性と検索性に優れたツール
 本・・・時間軸、空間軸が広く、全体的な知識を伝えるツール

と紹介し、うまく使い分けることを勧めていますが、これは、図書館でのレファレンスの際の情報源の使い分けと同じではないかと思いました。


また、新しい知識を学ぶときは、「厚い本」を最初に読むのが大事だと述べています。

 新しい知識を学ぶときは、私は必ず「分厚い本」から読むようにしています。厚い本が最初で、薄い本が最後です。
 あくまで一般論ですが、「分厚い本に、それほど不出来な本はない」と私は考えています。なぜなら、不出来な人に分厚い本が書けるとはまず思えないからです。
 分厚い本をつくるにはお金もかかるので、出版社も、不出来な人にはまず書かせないと思います。分厚い本が書けるのは、力量のある人です。力量がある人が書いた本なら、ハズレの確率は低いと思います。
 それに、薄い入門書は、厚い本の内容を要約し、抽象的にまとめられたものです。全体像を知らないうちに要約ばかり読んでも、その分野を体系的に理解することはできません。(p.73)


この、たくさんの本を読んできた著者の意見はもっともだと思うものの、普段、本と接することが少ない人には難しいような気がします。


図書館で働いている一人としてチェックしたのが、著者の、図書館の利用方法です。
本が増えて困るため、最近は図書館を利用しているとのことですが、3つの図書館を利用していて、読みたくなったらパソコンで図書館へリクエストを出していて、リクエストしている本が常時10〜20冊くらいあり、予定の入っていない休日の午前中は図書館で過ごすことが多いとのこと。ウィークディの昼休みが1時間取れれば、会社の近くの千代田区立四番町図書館に出向き、図書館で最初にチェックするのが新刊書のコーナーであるとのこと。これらのことからも、著者が図書館のヘビーユーザーであることがわかります。図書館の蔵書構成や、地域特性なども把握しながら、図書館を使いこなしているように思いました。

それから「、第3章の「本と「向き合う」」の中で、著者は、ひとそれぞれだとしながらも、読書の際には「本に線を引いたり、マーカーで印をつけたり、付箋を貼ったりしない」と述べています。ここを読んだ時、
「すみません。私、付箋を貼りながら、本を読んでいます…。」
と、恐縮してしまいました…。
このブログで引用している箇所など、本を読みながら、気になったところに付箋を貼りながら本を読むことが多いのです。さすがに、図書館で働いているので、本に線を引いたり、マーカーで印をつけたりすることはできません…。

 本は、おもしろそうに思える本を素直に読んでいけばいい。将来的に、役に立つかもしれないし、役に立たないかもしれない。それはどちらでもいい、と思います。
 自分の興味のある本を、ひたすら読む。あるいは、人から薦められた本を食わず嫌いをしないで読んでみるのもいい。
 功利的に本を読んでも、だいたいはうまくいかない気がします。世の中にそんなにすぐに役立つおいしい話はありません。好きな本を読んで、じっくりと体の中に毒が回ってくるのを待てばいいと思います。(p.152)


本は「読まなければいけない」ものではなく、楽しむためのものであること、「読んでみたい」と心を動かされた本を手に取ることだと著者は述べています。巻末には、この本の中で著者が紹介した本が、古典からマンガまで、10ページにわたってリスト化されています。紹介されている本を読破するのは難しそうですが。


本が好きな人と図書館の中の人には、この本、『本の「使い方」』をお薦めします。
それと、図書館のヘビーユーザーである著者に、今度は、“図書館の「使い方」”を語って欲しいと思いました。