第16回図書館総合展フォーラム「教育委員会制度改革を問う−図書館は「教育」にとどまるのか?」(第2部)

第16回図書館総合展フォーラム「教育委員会制度改革を問う−図書館は「教育」にとどまるのか?」の第2部の記録です。あくまでも、私が聞き取った範囲の内容を再編集したものになりますので、実際の内容と齟齬があるかもしれませんが、ご了承いただきたく、また、誤り等がありましたら、ご指摘いただけると幸いです。

【第2部】 首長からみた図書館行政(パネルディスカッション)

 パネリスト 大木 哲(神奈川県大和市長)
       関 幸子(株式会社ローカルファースト研究所代表取締役
       嶋津隆文(愛知県田原市教育委員会教育長)
 司会    糸賀雅児(慶応義塾大学教授)


 

  • (糸賀)今後、図書館をどうしていくか。これからの図書館は、地域社会の中でどういう役割を持っていると考えるか。
  • (関)2005年をピークに日本の人口が減少し、高齢化が進んでいる中で、地域経営には優先順位が発生する。また、都市部と地方では状況が異なる。地方では学校や図書館の統廃合が発生する。人口が集中し、高齢化が進む都市部では、福祉か図書館かの選択が発生する。図書館という建物はなくても、電子書籍という図書館機能は残る。民間への委託も視野に入れる必要がある。また、図書館はどんな役割をするのか、民間でできて公務員ではできないのか、考える必要がある。図書館は今までどおりではだめ。図書館員自身のイノベーションを進めて、もっと他流試合に出るべき。
  • (嶋津)コストの点から、田原市では学校の統廃合を行ったが、図書館も削らざるを得ないかと考えている。学校の統廃合の際は、地域の中で話をし、住民の理解を得るようにした。
  • (糸賀)地域の活性化ということで、病院と図書館が出たが、病院は目的がはっきりしているが、図書館は目的があってもなくてもいける所。乳幼児から高齢者まで利用する年齢も幅広く、地域の顔が見える。図書館は、地域がこれからどうあるべきかを考える場であり、人を育てる場でもある。
  • (大木)リタイアした人が図書館に行っている。図書館は居場所として良いので、少子高齢化になれば、図書館は必要。
  • (関)都市型で高齢者が増えている所は、居場所としての図書館が必要になる。また、地域の要となる、広域サービスの場としての図書館が必要ではないか。財政が厳しい場合は、税金ではなく、民間の寄付で運営するなど、柔軟に考える。政府の会議では、人口1〜5万人の自治体は、教育委員会をなくしてはどうかという話も出た。
  • (嶋津)教育委員会を廃止することには違和感がある。一律廃止ではなく、地域によって判断するのが良い。どこが図書館行政の責任を持つかについては、教育委員会が持つべきと考える。
  • (大木)学校教育が教育委員会の管轄であることはわかるが、社会教育について、学校教育と同じレベルでみることができるだろうか。高齢化率が高くなった時代において、今までと同じように生涯教育を考えてよいか。生涯教育は対象とする年齢が広く、様々な施策との連携を考えると、首長部局の方が妥当ではないかと思う。
  • (関)官民連携の点から、社会教育の中で図書館とスポーツ施設の機能をどう考えていくか。地域の人が入ることで、サービスが向上する。教育委員会におくと自由度が低いので、首長部局に置いた方が良いのではないか。図書館司書のミスマッチが起こっている現状では、外に出す(=民間委託)によってサービスが向上する。
  • (糸賀)首長部局の方が財政、人事はよくなるかもしれないが、民間委託については、教育委員会か首長部局かは関係ない。政治的中立性という点では、首長が学ぶことへのプレッシャーをかける恐れがあるが、それは教育委員会でも起こりうることである。図書館事業の継続性という点からは、首長が変わることで政策が変わるのは困る。
  • (関)首長部局、教育委員会、どちらであっても意思決定はきちんとできる。地域の変化の中で、地域がどう選択していくか。図書館に向いていない人が図書館に配置されるよりは民会委託の方が良いか。また、民間ではできて、公務員にできないのはなぜか。図書館について、教育委員会が所管することにはこだわらない。
  • (嶋津)どちらが良いかよりも、どちらの方がより悪くないかを考えると、教育委員会の方が悪くないか。バランスをとるのが行政のセンス。
  • (糸賀)図書館が地域にどのような役割を果たしていくか。教育委員会の制度そのものが変わってきた中で、図書館行政のガバナンスはどうあるべきか。つまり、図書館行政に、住民の要望をどう反映させるか。
  • (嶋津)生の住民の声を聞くことで、責任を共有化できる。図書館の職員が行政施策等を知り、対応すべきである。
  • (関)図書館職員は他流試合出ること。司書を図書館にだけ置かないで、様々な経験をさせてから図書館に戻す。様々な人が図書館に関わっていくこと。地域のステークホルダーも巻き込んでいくことが大事。
  • (大木)市民の皆さんの意見を聞きながら作り上げていく。市民が集まらない図書館は何かが欠けているので、検証してくことが必要。


このファーラムのテーマであった「図書館は教育委員会におくべきか、首長部局におくべきか」について、パネリストの大木市長と関さんは首長部局、嶋津教育長は教育委員会という立場だったでしょうか。ただし、3人とも、「どちらかと言えば…。」という感じで、明言はしていなかったと思います。図書館は教育委員会にとどまるべきか、首長部局に売った方が良いのか、明確な結論はフォーラムの場では示されませんでしたが、自分なりにいろいろ考えさせられたフォーラムでした。教育委員会制度改革については、押さえておいた方がよさそうです。
このフォーラムでも紹介されていて、会場でも販売されていましたが、『ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)』の最新号(第8号)の記事「特集 教育委員会制度の改革」は、本フォーラムの内容を復習するためにも、読んではいかがでしょうか。

また、三鷹市立駅前図書館の館長を務めた関さんが何度か繰り返しておっしゃっていた、「図書館員は、もっと外に出ること」「民ができて官はなぜできないのか」という発言は、おそらくご自身の経験によるものだと思われます。

それから、フォーラムでは、図書館と首長部局や教育委員会部局との連携が繰り返し述べられていましたが、図書館の行政支援サービスについては触れられませんでした。首長部局や教育委員会部局の職員に、図書館がどういうことができるのかを知ってもらうためには、図書館の行政支援サービスも重要だと思っています。
なお、図書館が教育委員会下の組織だとしても、自治体としての施策の影響は受けます。図書館の中の人も、自治体の職員です。自分の所属する自治体の現在の課題は何で、どういうことが求めれているのか、自治体がどういう施策をこれから進めていこうとしているかなどは、図書館にも関わってくる場合もあるので、一職員として、きちんと押さえておいた方が良いと思っています。