第16回図書館総合展キハラ株式会社100周年記念フォーラム(第2部)

「第16回図書館総合展」が終わって、もう1週間がたってしまいましたが、忘れてしまわないうちに、前回の続きで、キハラさんのフォーラムの第2部「図書館の永続的発展に向けて〜図書館はどこへ行く〜」の参加記録です。内容は、私が聞き取った範囲を再編集したものになりますので、実際の内容と齟齬があるかもしれませんが、ご了承いただきたく、また、誤り等がありましたら、ご指摘いただけると幸いです。

【第2部】図書館の永続的発展に向けて〜図書館はどこへ行く〜

 • 講師:糸賀雅児(慶應義塾大学教授)
 • 講師:中井孝幸(愛知工業大学准教授)
 • 講師:花井裕一郎(NPO法人オブセリズムCEO/小布施町立図書館まちとしょテラソ・前館長)
 • 司会:岡本 真(アカデミック・リソース・ガイド株式会社代表取締役/プロデューサー)

 
 

(岡本)

  • フォーラムの第1部で、日本の図書館は、戦後、アメリカから学び、努力と苦労を重ねながら、着実に発展を遂げてきたことをお話いただいた。時代の変化の中で、図書館の未来はどうなるだろうか。
  • 今回のフォーラムは、図書館の政策、図書館の建築、図書館の運営を3本の柱として進めていきたい。講師の3人には、まず、それぞれ自分の専門外について話していただき、その後、他の方からの意見に対するコメントをいただきたい。


(糸賀)

  • 戦後の日本の図書館の発展について。政策として、施設に対する国の補助を受けるには、館長が司書資格をもつことが要件としてあったが(図書館法第13条3項)、削除された(1999年)。これからは、国が先導するのではなく、地域住民のニーズに合った図書館を作るために、それぞれの自治体が考え、判断していくことが必要である。
  • 資料「『滞在型図書館』と『課題解決型図書館』」について
    • 滞在型図書館=十分な座席数都会的な空間を備えた図書館
    • 課題解決型図書館=十分な資料と職員の配置が行われている図書館
  • 北区立中央図書館と目黒区立八雲中央図書館でのアンケート調査の回答では、来館目的が「貸出返却のみ」が約4割だったが、そもそも「貸出返却のみ」の人は急いでいる人も多く、そもそもアンケートに回答してもらえなかったので、実際はもっと多いか?滞在時間の長い人は、図書館に何か言いたい人が多いのか、アンケートに答えてくれた。
    • 90分以上図書館にいた人を滞在型とすると、利用者の大部分は非滞在型である。
    • 時間をかけて図書館に来た人は、図書館に長くいる。そして、長時間図書館にいる人は、壁際にいる。
    • 10代、20代は長時間図書館に滞在しているが、自分の勉強のため。長時間滞在する人の実人数としては、60代以上が多い。
    • いずれにしても、利用者の大変は、滞在したり、課題解決のために図書館に来ているわけではない。


(中井)

  • 公共図書館での利用調査を行ってきたが、最近は、大学図書館での調査も行っている。
  • 図書館の規模によって、求められる機能が違う。
    • 小さい図書館:地域のサロン的機能
    • 中規模の図書館:学びの広場
    • 大きい図書館:都市的な空間(にぎわいのある空間により匿名性が確保される=都市的な落ち着き)
  • 館内を利用者が動いており、館内に均質にばらついている。
  • 大学図書館の調査では、自分たちの受けているサービスに対して要望が出た。受けていないサービスについては、要望が出ない。
  • 地方では自動車の利用率が高いので、図書館に駐車場が確保されないと、特定層(主婦層)の利用の減少が見られた。


(花井)

  • テレビの世界にいた(演出家)。図書館の現場は5年。
  • 図書館というカテゴリーを考えすぎているのではないか。図書を介してコミュニケーションをする場ととらえてはどうか。
  • 館長はサービスをするスタッフを動かし、館をマネジメントする人間なので、司書でなくても良いか。
  • 地方に行くほど、国の政策が届いていない(=地域の行政に、国の政策が伝わっていない)。
  • 建築については、現場の話を聞いて欲しい。ただし、現場の話を聞きすぎてもダメ。現場が面倒くさがるのは、自分が面倒臭いのであって、利用者の面倒臭さではない。コミュニケーション(設計者とのバトル)が図書館建築にあってもいい。


(糸賀)

  • 図書館の政策について、お二人から発言がなかったのは、いまさら言ってもしょうがないということか?
  • 補助金交付にあたっての館長の司書資格要件は削除されたが、現在も国の補助事業はある。それなのに、図書館の現場の人は待っているだけで、国の予算を自分から取りにいかない。例外的に、「光交付金(住民生活に光をそそぐ交付金)」は、図書館が予算を取りに行った。
  • 「望ましい基準(図書館の設置及び運営上の望ましい基準)」が改正され、告示があった。全国一律の基準が果たして役に立つのか。それぞれの地域に合った図書館を、地域の意見を聞きながら、官民一体で作り上げていくものでは?

図書館の設置及び運営上の望ましい基準 (平成24年12月19日文部科学省告示第172号)

  


(中井)

  • 館長には、どういった図書館にしたいのかというビジョンを示して欲しい。
  • 図書館の発言力が弱いのか、図書館の人が話す場がない。図書館の人たちが前に出て発言するような、リーダーシップのある人を継続して育てていくことが必要か。


(花井)

  • 図書館は、利用を増やすためのリサーチを行っている。
  • 図書館の人は、カウンターを聖地と思っているのか、カウンターから動かない人が多い。もっと、お客様のそばに行くべき。
  • 図書館長は、図書館をマネジメントし、お金が必要な理由を数字できちんとトップに示して、お金をとる。
  • (国の予算を取りに行くことについて、)図書館の人が動かない、というより、書類を提出するところである教育委員会の人が動かないのでは?


(糸賀)

  • お金にしても、事業にしても、図書館は、外への働きかけが弱い。自治体のほかの組織や外の団体とつながることで、図書館の存在感を示すことができる。実績が認められれば、事業は継続できる。図書館は、自分たちでアンテナをはって、予算を取りに行くべき。
  • 建築家は口を出しすぎ。図書館の運営面(ソフト面)への配慮をして欲しい。例えば、自動化書庫は、市町村立図書館には不要なのでは?自動化書庫にお金をかけるよりも、資料や職員にお金をまわすべき。


(岡本)

島根県隠岐島の海士町中央図書館にみんなで本を贈ろう!
海士町中央図書館


(中井)

  • 建築家の思いだけが先行するのはだめで、利用者がどういうことを求めているのかとのギャップがないようにする。
  • お金をかけたから良いものができるわけではない。限られた予算で、メリハリをつけていくことが大事か。条件が厳しければ、建築家は燃える。
  • それぞれの図書館に合った使い方、考え方について、もっと議論すべき。学校を作る時は必ずワークショップをやり、どんな小学校を作るか、議論する。建築家の思想を生かしつつ、使いやすい図書館を作ることは可能と考える。
  • 図書館は、長く使うことを考えて設計しなくてはいけない。


(岡本)

  • 公共施設において、ワークショップの手法の拡大している。
  • ワークショップは、ワークショップのプロを入れることが大事。市民が自分たちの施設をつくるという主体形成を行う。


(花井)

  • ワークショップでは、「自分たちは何がしたいのか」という合意形成が大事。建築家はデザインのことを言わないで欲しい。そして、館長というマネジメントをする人が、最初から関わること(館長が最終的な責任をとる)。


(岡本)

  • 施設整備と施設管理が同じでない残念な事例は少なくない。


(糸賀)

  • 図書館の3要素は「施設」「資料」「職員」。割合は、「施設」が1割、「資料」が2割、「職員」が7割。使い勝手の悪い施設であっても、職員がその地域で何をやれば良いかがわかっていれば何とかなる。
  • 中長期的に職員をどう育てるかが重要。
  • 建物は50年使う。
  • おとといも話したが、教育委員会制度の中に図書館があるのが良いかという話にもなる。
  • 地域住民が「困ったとき」「分からないとき」に図書館や司書が相談相手に浮かぶ、という人を2、3割に増やす。
  • そのためには、自治体の中の様々な人と連携することで、問題を解決する人材を図書館が育てることである。


大学の授業を終えてからフォーラムに来たという糸賀先生、「授業のために第1部を聞けなくて残念。」と言っていましたが、司会の岡本さん曰く、この日も糸賀節(?)は絶好調だったそうです。(フォーラムの主催者であるキハラさんは、時間どおりに終わるのか、ハラハラしていたのではないかと思いますが。)
最後は、何となく、おとといのフォーラム「教育委員会制度改革を考える」と同じような着地点になったような気がします。「図書館は外に出ろ」に「図書館は人を育てろ」が追加されたように思います。そして、「人を育てる」は、図書館サービスやマネジメントをする図書館の中の人の育成であり、地域の人を育てるための図書館になる、という2つの意味があるように思いました。