『ビジネスマンへの歌舞伎案内』(NHK出版新書)

ビジネスマンへの歌舞伎案内 (NHK出版新書)

ビジネスマンへの歌舞伎案内 (NHK出版新書)


最初は、著者自身「歌舞伎はつまらない」と思っていたそうです。その一方、自分には退屈で仕方なかった歌舞伎をたくさんの人が観に来ていたことに衝撃を受けるとともに、自分にはわからない歌舞伎の面白さとは何か、歌舞伎を楽しめないのは日本人として損をしているのではないかと思い、歌舞伎座に通ううちに、歌舞伎ファンになったとか。そんな著者が、これほど面白い歌舞伎をリタイア世代だけの娯楽にしておくのは忍びない、若い人をはじめ現役のビジネスマンにも、とにかく一切の先入観を捨ててとにかく歌舞伎を観に居てほしい、という思いが詰まった、ビジネスマンへの歌舞伎への手引書のような本でした。著者なりの歌舞伎の楽しみ方も紹介されていて、面白かったです。


伝統芸能、というと敷居が高く感じる歌舞伎も、「歌舞伎はフェスみたいなもの」で、楽しみ方は自由だとすれば、確かに心理的なハードルが下がるような気がします。

歌舞伎もそれでいいのである。役者が入れ替わり立ち替わり舞台をつとめる。そのすべてを真剣に観る必要はない。いいなと思うところは見入り、退屈だったら居眠りをしてやり過ごしてもいい。最初から最後まで、肩肘張って観る必要はまったくないのだ。つまり、観る側が見方を決めていいのである。(p.27)


著者がビジネスマンに歌舞伎見物をすすめる理由は2つ。
1つは、歌舞伎が教養として役に立つこと。もう1つは、歌舞伎が仕事などで疲れた現代人を癒してくれる特効薬でもあること。
1つ目は、何となくわかりますが、2つ目は、もしかしたら「?」と思う人も多いかもしれません。歌舞伎から何か学ぼうと考えずにリラックスして歌舞伎を観て、「歌舞伎って、何だかよくわからないけど、すごい。いいものを観てしまった。」と思えるくらいでいいということ。つまり、歌舞伎という非日常を自分なりに楽しむことができるもの、ということでしょうか。


また、歌舞伎は生涯の趣味としても最適だとのこと。これは、私も実感しています。同じ演目でも、演じる役者さんによって微妙に違います。役者さんを観る楽しみもあります。私が歌舞伎を観始めた頃に子役として舞台に出ていた役者さんが、いつの間にか花形役者になっていたり。時には、役者さんの訃報を聞いてがっかりすることもありますが、残された役者さんたちが、今度はどんな歌舞伎を作りあげていってくれるのかを期待して、また、歌舞伎を観に行くことになります。

歌舞伎は確実にビジネスに効く。すぐには効かないが、あとからじわじわと効いてくる。歌舞伎見物はビジネスマンにとっての基礎体力づくりのようなものだから、一日でも早く始めた方がいい。続けているうつに、いつしか、なるほど確かに効いたなと実感する日がやってくるはずだ。そのときはには、身近な誰かに歌舞伎見物をすすめてもらえればと思う。(p.6)


私が歌舞伎を観始めたのは20代半ばで、ミーハー気分で観に行って、1回目ではまってしまいました。その結果、現在では、ほぼ毎月、歌舞伎座を中心に、歌舞伎を観ています。歌舞伎に出会えて、本当に良かったと思っています。
そして、歌舞伎が図書館の仕事に効くかどうか、と言われれば、歌舞伎を観ていて損はないと思っています。