筑波大学知的コミュニティ基盤研究センター公開シンポジウム2015「インタージェネレーション:高齢社会における図書館」

少し前になりますが、筑波大学知的コミュニティ基盤研究センター公開シンポジウム2015「インタージェネレーション:高齢社会における図書館」に参加しました。

筑波大学 知的コミュニティ基盤研究センター公開シンポジウム 2015「インタージェネレーション:高齢社会における図書館」

筑波大学知的コミュニティ基盤研究センターでは、毎年、情報メディア、情報技術、知的コミュニティなどに関連するテーマを設定し、シンポジウムを開催しております。 本年度は「インタージェネレーション:高齢社会における図書館」をテーマにシンポジウムを開催いたします。また、センターの研究部門による成果報告会も同時開催しますので、合わせてご参加ください。

 日時:2015年3月6日(金)
 •第1部 成果発表と今後の展望 12:30〜13:35
 •第2部 公開シンポジウム   14:00〜17:00

 場所:筑波大学東京キャンパス文京校舎120講義室


私は、第2部の公開シンポジウムにのみ参加しました。年度末モードの関係で、参加できるかどうか、ギリギリまでわからなかったので、事前申込はしていなかったのですが、当日参加でも大丈夫でした。

公開シンポジウムの綿抜先生の挨拶によると、「今回のシンポジウムは、“高齢化社会の中でどのようなサービスが可能か”を考える場にしたい。」とのことでした。


以下は、当日の私のメモをおこしたものです。(私がメモした範囲での記録なので、聞き漏らしたことや、発表の内容と異なる点があるかもしれませんが、ご了承ください。)


■「高齢社会と図書館:インタージェネレーション型の図書館サービス」 呑海沙織(筑波大学図書館情報メディア系/知的コミュニティ基盤研究センター准教授)

  • 日本における高齢化の現状
    • 過去最大の高齢化社会高齢化率 25.1%)
    • 高齢化率の上昇と生産年齢人口の減少。平均寿命、健康寿命も伸びている。
      • 健康寿命:健康上の問題がなく日常生活を普通に遅れる状態
    • 一人暮らしの高齢者の増加
    • 世界と比較しても、日本の高齢化が突出している。日本は高齢化先進国。
  • 図書館サービスにおける高齢者の位置づけの変遷
    • 1970年代以前は厄介者扱い。高齢者にスポットが当てられていない。
    • 1970年代〜 障害者サービスの一環。高齢者を「その他の障害者」として位置づける(視覚障害者→身体障害者→「図書館の利用が困難な人」)
    • 1980年代〜 高齢者へのサービスを障害者へのサービスの一部として位置づけて良いか?
      • 1999年 国際高齢者年
    • 2000年代〜 独立した1つのカテゴリーとしてとらえる考え方(5つの利用者カテゴリー:成年、児童・青少年、高齢者、障害者、地域に在留する外国人)
    • 2013年に公共図書館を対象とする高齢者サービスについてのアンケート調査を実施した。高齢者サービスについて「特に意識していない」が半数以上だった。
  • 一元的な高齢者のイメージからの脱却
    • ラスレット(Peter Laslet)の人生四段階区分論
      • ファースト・エイジ:教育を受け社会化される時期
      • セカンド・エイジ:家庭や社会において責任を担う時期
      • サード・エイジ:自己達成の時期。まだアクティブに活動できる段階であるにもかかわらず、もはやフルタイムの仕事や子育てに従事しなくなった時期
      • フォース・エイジ:依存や老衰の時期
    • それぞれの区分は個人の選択で決まる
    • サード・エイジでは、サービスの提供者とサービスを受ける人の境界線がなくなる。
  • フォース・エイジと図書館
    • 回想法用キット(資料)の貸出→回想法を利用した図書館サービス
  • インタージェネレーション
    • 世代間の交流(双方向の交流)及び協働。
    • 高齢者「若い世代との交流に参加したい」。
    • 図書館から利用者への一方向のサービスの提供 → 双方向の協力 → 新たな価値やサービスの提供 → コミュニティの中の図書館の存在意義


■「テレビ番組のインターネット配信と高齢社会」 辻泰明(日本放送協会 オンデマンド業務室 室長)

  • テレビ番組のインターネット配信と高齢者(その現状)
    • インターネットサービスの利用傾向を見ると、動画サイト、SNSについて、高齢者の利用が低い。
    • テレビ番組の動画の利用も、高齢者は他の年代よりも低い。
    • ただし、高齢者はテレビ番組が嫌いなわけではなく、NHKの朝の連続小説をよく見ているし、夜8時台の番組もよく見ている。
    • デジタルデバイドの存在。高齢者はテレビ番組を見ているが、若年層はインターネットで見ている。
    • 高齢者と若年層が一緒に動画を見ることで交流が生まれるのではないか?
  • オンデマンド配信を利用したインタージェネレーション
    • インターネット配信
      • 同時再送信=決まった時刻に決まったものを放送と同時に送信
      • オンデマンド配信=好きな時に好きなものを選択可能
        • キャッチアップ=見逃した番組を見る
        • アーカイブ=過去の番組を見る
    • 高齢者のほとんどは、幼少期からテレビ番組を見ていた。
    • アーカイブを利用して、昔の番組やニュースを視聴する中で、高齢者の話(当時の様子など)を聞くことは、高齢者の自己実現にもつながる。また、オーラルヒストリーはなかなか残りにくい貴重な情報でもある。
  • テレビ番組とオンデマンドサービスの利用にあたって
    • 3つの課題:(1)配信方法が複雑、(2)検索が不確実、(3)著作権が錯綜(不特定多数の視聴にあたっての権利処理)
    • 図書館などでの企画展示、インターネット上の情報を収集・編集して発信するなどのキュレーションが必要か。
    • オンデマンドを利用する「場」が必要。図書館に期待している。


■「公立図書館におけるターゲット・マーケティングと支援サービス」 山崎博樹(秋田県立図書館副館長)

  • 図書館の3つのキーワード:強み、連携、ターゲティング
  • 自分たちの図書館の「強み」を認識し、自分たちの強みを生かせる「連携」先を探し、「ターゲティング」でセグメントを狭くして様々なセグメントを組み合わせて付加価値を高めることにより、新たな利用者を生み出す。
  • 課題解決のための予算要求(目的をはっきりさせる)。
  • テーマよりは年代を意識する。
  • コーナーを作るだけではなく、関連機関とも連携していく。コーナーを作ることで、行政とも連携しやすくなる。
  • 電子書籍は文字を拡大することができるので、高齢者サービスの1つになりえるのではないか。
  • 図書館が場所を提供してセミナーを実施するのも連携の1つか。


■「絵本をまん中に『孫』から『孫たち』へと広がる活動を楽しむ高齢者達」 江幡千代子,福富洋一郎(つづきっこ読書応援団・JiJiBaBa隊)

  • つづき図書館ファン倶楽部→つづきっこ読書応援団(つどおう)→Jijibaba隊
  • 子供たちとふれあうことで、元気のエネルギーをもらえる。
  • 現役時代の経験を地域に還元する。図書館は、プラチナ世代を活用していくことが必要ではないか。
  • つなぐことが大事。つなぐことで化学変化がおきて、予期しない結果が生まれる。
  • 良いことをやっても、知られなければ意味がない。
  • 高齢者は面白いことが好きで、夢中になれる。高齢者は可能性をたくさん持っている。


■「カナダの公共図書館高齢者サービス:コミュニティと作る図書館サービス」 溝上智恵子筑波大学図書館情報メディア系/知的コミュニティ基盤研究センター教授)

  • 世界的に高齢化が進んでいる。
  • 移民国家カナダの高齢化率は14.8%。移民を受け入れたとしても、人口の高齢化が解消されるわけではない。
  • これから高齢化が進むアジアの国々に日本の経験を伝えられると良いのではないか。
  • 高齢化率を元にした社会分類:高齢化社会高齢社会→超高齢社会
  • カナダは連邦制。州によって統計のとり方が異なり、国としてまとまった統計がない。
  • カナダ図書館協会「カナダにおける高齢者のための図書館情報サービス・ガイドライン」(2002年)では、高齢者を55歳以上と定義。多様性の重視と情報サービスの拠点としての図書館。
  • コミュニティ主導型図書館サービス:コミュニティと図書館が協働してサービスを提供する。図書館員は地域のファシリティとなる。
  • 今なぜコミュニティ主導型サービスなのか?→ 社会的に排除された人々(移民、先住民、貧困者など)へのサービスの提供する。高齢者も「社会的に排除された人々」の1つ。
  • もともと、図書館は誰でもわけへだてなく受け入れられる施設。図書館をコミュニティの活動拠点と位置づける。そのためには、コミュニティのニーズを引き出し、把握していくことが大事。

 


休憩の後、質疑応答及びパネルディスカッションがあったのですが…。 質問者の発言が良く聞き取れなかったために展開をうまく把握できませんでした。
また、コーディネーターが不明で*1、前半の発表の結果をまとめて、今後につなげるという展開にならなかったことが残念でした。今回のシンポジウムのテーマの意図とは違った質問が出たりしていたので、休憩時間に質問用紙を回収するなどの方法をとったりしても良かったのではないかと。
高齢化社会が進む中で、これからの図書館サービスを考える機会になるかと期待していたので、少々残念です。

また、元気な高齢者がいる一方、図書館が近くにない、図書館があっても健康上の理由などで行けないという高齢者も少なくないはずです。山崎さんがセグメント化について発言していましたが、高齢者サービスもひとくくりではなく、細かくセグメント化して、溝上先生の発言のようにコミュニティのニーズに合った高齢者サービスの提供が必要と思ったりしたのですが、難しそうです…。


高齢社会につなぐ図書館の役割―高齢者の知的欲求と余暇を受け入れる試み

高齢社会につなぐ図書館の役割―高齢者の知的欲求と余暇を受け入れる試み

*1:呑海先生だったのでしょうか?