第101回全国図書館大会シンポジウム「図書館とまちづくり〜世代をつなぎ、次代を育て、地域をつくる〜」

今日から11月で、今月は、図書館総合展が11月10日(火)から12日(木)まで、パシフィコ横浜で開催されます。
10月は、国立オリンピック記念青少年総合センター で開催された第101回全国図書館大会東京大会に参加しました。私は、10月15日(木)午後のシンポジウムと、16日(金)午前の第1分科会「これからの図書館ネットワークのあり方〜都道府県立図書館の連携・協力事業を中心に〜」に参加しました。少し遅くなってしまいましたが、ようやく、参加メモをまとめることができました。以下は、私が記録できた範囲となりますし、記録できなかったことや、私の認識違いもあるかとは思いますが、参考にしていただければ幸いです。

ニュースでは、シンポジウムで「TSUTAYA図書館」が話題になったことが取り上げられていました。確かに、「TSUTAYA図書館」の話は出ましたが、ニュースに取り上げられるほど語られたかと言えば、個人的には、それほどでもなかったような気がしているんですが。
なお、一応、シンポジウムの台本はあったそうですが、コーディネーターを務めた慶応大学・糸賀先生が、「台本とは全く違うことになったが、パネリストの方には的確に答えていただいた。」と最後に話していました。また、パネリストとして予定されていた埼玉県立熊谷図書館・乙骨館長は当日欠席で、報告はパワーポイントの上映のみ(糸賀先生の解説付き)で、代わりに神奈川県立図書館西原課長がパネルディスカッションに参加しました。

 第101回全国図書館大会シンポジウム「図書館とまちづくり〜世代をつなぎ、次代を育て、地域をつくる〜」 

  • 平成27年10月15日(木) 午後2時30分〜午後4時30分
  • コーディネーター  糸賀雅児(慶應義塾大学文学部教授)
  • パネリスト     
    • 木原正(福岡県宇美町町長)
    • 豊田高広(愛知県田原市教育委員会教育部次長兼中央図書館長)
    • 石原真理(神奈川県立中央図書館資料部図書課長)


[糸賀]

  • シンポジウムでは、最初に、それぞれ違う立場から「図書館とまちづくり」について、話していただく。後半は自分も加わって、パネルディスカッションを行う。
  • 最近は「居場所としての図書館」というようなことが言われており、従来とは図書館の位置づけが変わってきた。図書館が、違う機能が求められてきている。最近話題の「TSUTAYA図書館」にも触れることになるだろう。


○ 福岡県宇美町町長 木原正氏

  • 町長に就任して、1年半。地域交流センター「うみ・みらい館」は、前任の町長の思いが詰まったものである。
  • 宇美町は、炭鉱の町として栄えた。炭鉱は、昭和38年に閉山。福岡市に隣接していることから、ベッドタウン、また、軽工業の町となっている。
  • 町の歴史は古い。『魏志倭人伝』に出てくる「不彌(ふみ)国」が宇美町とされている。名所・旧跡も多い。
  • 宇美町の人口は37,607人、15,000世帯が住んでいる。2020年に、町制施行100周年を迎える。
  • 財政は、非常に厳しい。国の補助金まちづくり交付金)を使用したため、「うみ・みらい館」は図書館単独施設ではない。図書館は、「うみ・みらい館」、中央公民館、住民福祉センター、働く婦人の家の施設で構成される「ふみの里まなびの森」*1の中核施設となっている。宇美町は、平成13年度から、生涯学習の振興に努めている。  
  • 「うみ・みらい館」は、QBSの手法を用いて建設した。QBS方式で作った建物としては、横須賀市の美術館*2が有名だが、図書館としては初めて。設計者の実績・資質・人柄・事業に対する熱意等を評価して設計者を選ぶ方式で、日本設計の森さんに設計をお願いした。
  • 「すべての住民に図書館に愛着を持って欲しい」という前町長の思いと、町民のニーズが反映した施設となった。
  • 「炭鉱の町」という暗いイメージを払拭し、「文教の町」を作りたかった。
  • 幅広い年代の住民から意見を伺いながら、町を挙げての気運づくりを行い、施設案に盛り込んだ。「癒しの空間」と「交流スペース」の機能を取り入れ、2年かけて建設した。
  • 喫茶室は、福祉財団に貸与して運営している。
  • 今年3月に「第2次宇美町子ども読書活動推進計画〜ふみの里うみっ子読書プラン」を策定した。
  • 図書館は、PDCAのサイクルで運営にあたっている。
  • 「図書館を使った調べる学習」について。夏休み期間中は、学校司書が図書館に出張し、「お助け先生」として、館内を自由に回りながらサポートする。
  • 町内の学校司書の連絡会を月1回開催している。学校司書は、町で雇用している。
  • レファレンスには、図書館の司書だけでなく、学校司書も対応する。


○ 愛知県田原市教育委員会教育部次長兼中央図書館長 豊田高広氏

  • 田原市は、渥美半島の大部分を占める。人口減少、高齢化、地域間格差等の課題を抱えている。
  • 田原市三重県鳥羽市と結ぶ伊勢湾フェリーの廃止の動きがあった時に、田原市図書館では、鳥羽市立図書館と連携したイベントを実施した。*3
  • 「元気はいたつ便」について。図書館へ欄関することが困難な高齢者を対象とする事業で、現在、18施設を巡回している。光交付金(住民生活に光をそそぐ交付金)を使って始めた。団体貸出と訪問サービスの2種類あり、訪問サービスでは、グループ回想法と元気プログラム(ミニ回想法レクリエーションを組合せたもの)を実施している。
  • 渥美図書館のリニューアルについて。渥美図書館は、人口減少地域にあり、隣に高校があるが、生徒が立ち寄らなかった。地域の活性化、若者が来たくなる居場所づくりのため、2000万円の予算で、開館20周年にリニューアルし、「ティーンズコーナー」や「リフレッシュコーナー」を作った。リニューアル後、中高生の来館が増えている。
  • 図書館は、市役所の中で一番アグレッシブな場所と言われている。「攻め」の図書館運営と、チームによる目標管理を行っている。
  • 子供読書から生涯読書への動きの中で、町づくりと本(図書館)をかけ合わせ、地域や住民の課題解決のための読書が求められている。
  • 田原市図書館は、「歌って踊れる図書館員」の育成をしているのではない。「自分ができることをする」という、職員の企画から出てきたことである。


○ 埼玉県立熊谷図書館長 乙骨敏夫氏

  • 県立図書館の抱える課題
    1. 施設の老朽化(昭和30年代に作られた施設が多く、今後は、改修・移動・配置換えも検討の視野に入れていかなくてはいけない。)
    2. 資産の格差(資料費の減)
    3. 資格のアンバランス(専任の司書の減。館長の有資格者が市区立で増加しているのは、指定管理の影響?)
  • インターネットでピンポイントに情報を探し、ブラウジングが衰退。読書量が減少している。
  • 県立図書館の役割
    1. 市町村立図書館への支援
    2. 市町村立図書館への資産の投入
    3. 調整機能
  • 県立図書館は、それぞれ県の状況にあった活動をすべきであり、市町村立図書館の後方支援を行っていく必要がある。


○ 神奈川県立中央図書館資料部図書課長 石原真理氏

  • 今日は、県立図書館で働く1図書館員として発言する。
  • アーカイブについて。公共図書館は、地方公共団体の成果物を網羅的に収集し、整理することが少ないのではないか。
  • 神奈川県行政アーカイブ」を10月10日に立ち上げた。県(県政情報センター)、神奈川県公文書館、県立図書館の3社で共同運営し、県立図書館のサーバに登録している。


○ パネルディスカッション

[糸賀]

  • 図書館の、地域に対する様々な取組を報告していただいた。図書館がまちづくりとどう関わっていくのか、司書の役割について発言をいただきたい。

[木原]

  • 宇美町では、全校に司書を配置している。図書館の司書は17名で、合計25名の司書がいる。
  • 図書館を拠点とした「知のまちづくり」には、図書館の機能が必要。図書館関係者が一体となって取組んでいることで、成果を生んでいる。
  • 労働基準法の関係で、司書を継続して雇用できない。3年が限度で、週31時間しか働けないので、司書が定着しない。今の図書館の体制をどう維持していくかが課題である。

[糸賀]

  • 職員の雇用は、町長の判断1つではないか。(ぜひ、司書を正規で採用して欲しい。)

[木原]

  • 生活を担保できるような雇用形態を保証できるようにしたいと思っている。近隣の自治体と連携して、ローテーションを組めないか。
  • 人材確保・育成に不安がある。

[糸賀]

  • 町長には、ぜひ前向きに司書の雇用を考えていただきたい。そうすれば、全国で有名になる。
  • 田原市図書館の職員育成について伺いたい。

[豊田]

  • 職員を育てることについて。「仕事が面白い」から「学び、成長する」。そうすれば、仕事が「楽しくなる」。この循環ではないか。いくらお金をもらっても、仕事が楽しくないと、だめだと思う。

[糸賀]

  • 司書の研修と日常のトレーニングについて、館長はどのような指示をしているのか。

[豊田]

  • 環境が重要と考える。
  • 司書は、図書館が起きていることについてはすべて発言できる。グループウェアでシェアし、フィードバックしている。
  • 研修への派遣と講師の招へいの予算確保が必要と考える。資料費を削ってでも司書の研修費を確保して欲しいと予算をつけてもらった。
  • 日常の仕事から学ぶことで、成長できる。

[糸賀]

  • 地域の課題に、図書館の職員がアンテナを張ることが重要。
  • 県立図書館は、地域に対してどういう支援・サポートができるのか。

[石原]

  • 県立図書館の職員が講師となって研修を実施したり、市町村立図書館のお手本となるような先進的な取組を実施することによって、図書館をバックアップすることだと思う。
  • 「まちづくり」に県は直接関わらない。市町村立図書館を支援するのが県立図書館の役割だと思う。

[糸賀]

  • 木原町長に、「まちづくり課」を作った理由について伺いたい。

[木原]

  • 「まちづくり課」は、まちづくりを所管する課で、共働のまちづくりを目指す。地域のすべのことが公の任務と考える住民の意識改革を図りたい。将来的には、小学校単位のコミュニティを作り、コミュニティの中で、子供の育成や住民の意識改革を行っていきたい。
  • コミュニティの中での図書館の役割について、コミュニティ単位に本のある場所として、図書館は基幹になると思う。

[糸賀]

  • 読書を通じて思考力を深め、論理的思考ができるようになる。世の中のことを学んでいけるのが本というメディアと考えるが、図書館は地域とどう関わっていくのか。

[豊田]

  • 地方創生に、図書館はもっと関わっていくべきではないか。先進性のある事業に対して、交付金を活用していくべきではないか。例えば、TTP関係で、農業の人材育成に関わる事業とか、市町村単独ではできない実験的な事業に国の交付金を活用する。
  • 自分の図書館が持っている資源と、地域の課題や他の資源をマッチングさせれば、ユニークな事業を生み出すことができる。

[糸賀]

  • 地域の中での課題解決について、計画の中に図書館がきちんと組み込まれていることが必要。そのためには、親組織がどのようなことを考えているか、図書館が把握しておくことが重要であるが、県立図書館はどうか。

[石原]

  • 県政と図書館の関わりについて言うと、県の方針に図書館の事業を結び付け、図書館の方から打ち出すようにしている。いろいろな施設・部署と結びつけることを考えるのが、司書の役割と考える。

[糸賀]

  • 最近は「居場所としての図書館」と言われている。鎌倉市立図書館のTwitterも話題になった。

[木原]

  • 図書館には間口の広さと度量の広さがあるので、人の居場所になることはあり得るか。図書館に様々なスペースを組み合せて、住民の要望に応えるようにした。
  • 図書館が、学校へ行けない子供の居場所となれるのなら、それでも良いが、図書館は学校や家庭とも連携していく必要がある。

[糸賀]

  • 図書館が、地域の人の活躍できる場であり、誰にとっても居場所になることだということだが、最近は「TSUTAYS書店」とか、居場所づくりに民間が入ってくることがあるが、これについてはどう考えるか。

[豊田]

  • 民間のノウハウを生かした図書館づくりは可能だが、直営であるほうが望ましいか。「まちづくり」という観点では、直営の方が継続性があるので良い。
  • 居場所という点では、全部直営は難しい。行政には、つながりをアレンジするというプロデューサー的役割が求められる。人を呼ぶ、にぎわい創出については、直営ではやりきれないか。

[石原]

  • 民間企業が図書館運営に関わることは、刺激を受ける、という点では良い。ただし、選書など、基本のところはきちんと押さえておいて欲しい。
  • 図書館の本質は、資料提供と課題解決。図書館機能の多機能化にあたり、効率的運営のために民間のノウハウは取り入れることはあるかと考える。

[糸賀]

  • 台本とは全く違う運営になったが、パネリストの方には的確に答えていただき、まとめることができた。