第101回全国図書館大会・第1分科会(公共図書館)「これからの図書館ネットワークのあり方〜都道府県立図書館の連携・協力事業を中心に〜」(その1)

第101回全国図書館に参加した記録。前回のエントリーに続いて、2日目(10月16日)午前の第1分科会「これからの図書館ネットワークのあり方〜都道府県立図書館の連携・協力事業を中心に〜」に参加しました時の記録です。以下は、私が記録できた範囲となりますし、記録できなかったことや、私の認識違いもあるかとは思いますが、参考にしていただければ幸いです。
テーマの関係で、参加者は都道府県立図書館関係者が多かったのではないかと思います。基調講演で、国立国会図書館関西館の渡辺さんが、「都道府県立図書館は、厳しい状況に置かれているのでは?」という問題提起がありました。しかし、そのあとの展開は、都道府県立図書館の現状認識程度で終わってしまったような気がします。確かに、各都道府県立図書館を取り巻く状況は、ひとくくりでくくれないですし、もしかしたら都道府県によってすべて違うのかもしれません。そして、都道府県立図書館の職員が、自分たちを取り巻く厳しい状況をどれだけ認識しているか? その回答は、都道府県立図書館の職員一人一人が探していくものなのかもしれませんが…。
なお、記録をおこしたら、結構な分量になってしまったので、分割して掲載します。今回は、基調講演の部分のみの記録となります。来週の図書館総合展開催までには、第1分科会の記録のエントリーを終了させたいと思っているのですが、どうなるでしょうか?

 第1分科会 公共図書館「これからの図書館ネットワークのあり方〜都道府県立図書館の連携・協力事業を中心に〜」


○ 基調講演「都道府県立図書館の機能についての論点整理」 渡邉斉志(国立国会図書館関西館アジア情報課長)

  • 都道府県立図書館(以下「県立図書館」という)が、現在、どのような課題を抱えているのか、また、「厳しい状況」と言われているが、どのような状況なのかを整理したい。
  • (自己紹介)1992年に国会図書館に入った。2008年から2年間、北海道石狩市*1の図書館長を務めた。   
  • 本日は、国会図書館の職員としてではなく、一個人として講演する。図書館を利用しない住民を含めた「地域住民目線」で論点整理を心がけるが、その分、参加者の皆様には「厳しい」と感じられるかもしれない。
  • 県と市町村の「二重行政」の問題にも触れたい。
  • 県立図書館の概観
    1. 調査研究図書館機能(個人貸出をしない、児童サービスをしない等)
    2. 市町村支援機能(相互貸借、協力レファレンス等)
    3. 図書館振興(県内の市町村を振興する役割等)
  • 県立図書館の設置・運営は、県の施策の一部。県立図書館について、県の公共施策全体の中でとらえる必要がある。県立図書館の設置者(=県)の役割の中で、県立図書館の設置・運営はどのように位置付けられているか。地方自治法に規定されている「補完」「連絡調整」「広域事務」に当てはまるかどうか。
  • 補完事務の担い手としての県立図書館
    • 図書館未設置の市町村に対するサービス
      • 県立図書館が、その地域への直接サービスの供給者となる。しかし、図書館未設置地域に住む人は、物理的な距離感から、県立図書館の存在を意識しない。このため、市町村に図書館の設置を促す県もある。例えば、1970年代の東京都、1980年代の滋賀県など。
      • 図書館未設置の市町村に住む人は少ない。ほとんどの県民が、図書館がある市町村に住んでいる。このような状況の下で、県が補完機能を発揮することをどうとらえるのか。
    • 図書館がある市町村に対するサービス
      • 蔵書規模に限界のある市町村立図書館に対して、相互貸借等によりサポートすることにより、市町村立図書館の蔵書を補完する。しかし、公立図書館が収集できているのは、出版物のごく一部でしかない。
      • また、県立図書館は市町村図書館が所蔵しない図書を購入する場合もあり、補完ではなく、実は、共同蔵書構成ではないか。
    • 相互貸借については、県単位の枠組みの他、ブロック別の枠組みも重層的に存在している。市町村立図書館間の水平連携もある。
    • 県立図書館の補完機能は、なかったとしても致命的ではないか?
  • 連絡調整事務の担い手としての県立図書館
    • 連絡調整事務としては、以下がある。
      • 県内の図書館関係団体の事務局
      • 統計類のとりまとめ
      • 研修などによる人材育成
      • その他(運営相談など)
    • これらについて、大規模な蔵書がなくても可能、図書館サービスを実施していなくても可能という意見もある。
    • 主管課との関係から、県立図書館が果たし得る連絡調整機能は限定的という実態がある。
  • 広域事務の担い手としての県立図書館
    • 県内全域へのサービスは、県立図書館だけではできない。市町村立図書館との連携が必要となる。
    • 県立図書館の8割以上が、戦前に設立されているが、その頃は、市町村の規模が小さく、図書館が設置できなかった。当時とは、市町村の財政力、行政区域が大きく変化している。
    • 県立図書館は、分館を設置したり、移動図書館事務を運営してきたが、時代とともに、広域事務は変わってきている。
    • 前提として、財政問題がある。公共施設は維持するだけでもコストがかかる。このため、総務省が、自治体に対して、公共施設総合管理計画を策定し、公共施設等の全体像を把握し、長期的な視点を持って更新・統廃合・長寿命化を計画的に行うことを要請している。*2
    • また、高知県高知市長崎県大村市等、県と特定市による図書館の共同設置の例もあり、県が単独で図書館を設置する必然性がなくなっている。
    • 建物の立替のタイミングで、運営コスト、あり方の見直しなどを提起される可能性が大きいか。
    • 現代において「広域性」が本質をなす図書館サービスはどのようなものか。蔵書規模や蔵書傾向がいくらか異なるという程度では、県立図書館と市立図書館との間の本質的な差異と見なされないだろう。県立図書館のサービス・事業の中で、市町村立図書館ではできないものは何かを考えていく必要があるか。
  • 調査研究図書館機能について。県立図書館では、(1)国内資料(図書、雑誌、新聞)、(2)データベース、、(3)外国語資料、電子ジャーナル を揃えて対応するとしているが、これで第一線の研究ができるかと言えば、無理。
  • 県と市による図書館共同設置の実例から、どのような機能が消え、どのような機能が残るのか。また、広域図書館(複数の県による図書館の共同設置)は存在するのか。県が単独で図書館設置を担うのが困難だとした場合、図書館を設置する意味も示さなくてはいけない。
  • 財政的な余裕とも関係するが、二重行政の側面があるにしても、それでもなお、県立図書館が維持される可能性があるのか、考えていく必要があるだろう。


[質疑応答]
山形県立図書館長)

  • 財政問題は、県よりも市町村の方が深刻。県内すべての市町村の図書館を見て回ったが、蔵書はすべて異なっていた。県の歴史の保存が、県としてのアイデンテティになると考えている。

→ 県によって、状況は違うと思う。また、県立図書館は、県の歴史を共有する場ともなるのではないか。


(元鳥取県立図書館長)

  • 県立図書館について、県の職員がどれだけ認識しているか。図書館を外から査定すると、二重行政と指摘される。県立図書館に来館できる利用者は限られている。なぜ県立図書館が必要なのかを考えなくてはいけない。
  • 県立図書館は、市町村立図書館ができない先鋭的な取組を実施する。
  • 地方創生の中で、行政に対して、県立図書館がきちんと情報提供をし、県の機関として図書館が必要であることをアピールしていくことが重要か。