第101回全国図書館大会・第1分科会(公共図書館)「これからの図書館ネットワークのあり方〜都道府県立図書館の連携・協力事業を中心に〜」(その2)

第101回全国図書館に参加した記録。前回のエントリーに続いて、2日目(10月16日)午前の第1分科会「これからの図書館ネットワークのあり方〜都道府県立図書館の連携・協力事業を中心に〜」に参加しました時の記録の後半です。以下は、私が記録できた範囲となりますし、記録できなかったことや、私の認識違いもあるかとは思いますが、参考にしていただければ幸いです。

 第1分科会 公共図書館「これからの図書館ネットワークのあり方〜都道府県立図書館の連携・協力事業を中心に〜」


○ 報告:「神奈川県立2館の連携・協力の事例から」 森谷芳浩(神奈川県立図書館企画協力課副主査)

  • 神奈川県立図書館は、神奈川県立、県立川崎図書館の2館体制で運営している。
  • 相互貸借は、蔵書の多い政令市の図書館に負担がかからないよう、申込のルールを決めている。
  • ミニ調査(協力車で巡回中に、図書館にヒアリングする)の結果を、館名を伏せて、一覧にして公開している。
  • 高校連携事業として、総合目録を作成している。
  • 廃校となった高校を利用し、資料を保存している。
  • 神奈川県図書館協会神奈川県資料室研究会の事務局を担当している。
  • 平成24年10月、「神奈川県緊急財政対策」が出され、県立図書館の機能を集約・鈍化(閲覧・貸出機能の廃止)の方針が出された。その後、平成25年2月に、閲覧機能を維持することが表明され、この方向で検討中。
  • 機能特化か、フルスペックか。恐らく、どちらでもないと思う。資料提供やイベントだけでない新たな連携が必要なのだと思う。
  • 今年10月に「神奈川県行政アーカイブ(CKAN)」を公開した。行政資料の利便性の向上を図るとともに、オープンデータ推進の動向を踏まえたものである。
  • 県立図書館は「価値創造の場」として、神奈川県の文化と産業の発展、社会づくりに寄与していきたい。また、図書館以外とネットワークを結んでいきたい。


○ 報告:「千葉県の公共図書館ネットワークの現状と今後〜よりよい連携を求めて〜」 大槻富保(千葉県立中央図書館図書館連携課長)

  • 千葉県の公共図書館ネットワークについて、図書館協力業務、研修事業、図書館運営相談の3点について説明する。
    1. 図書館協力業務
      • 図書館協力業務としては、図書館間貸出と協力レファレンスがある。
      • 千葉県の図書館設置率は70.4%で、全国最低レベル。
      • 県立図書館が3館あり(中央、西部、東部)、地域を分担して支援を行っている。協力車は、週1回巡回しているが、千葉市は、週2回、県立中央に車が寄る。
      • 県立図書館から市町村への貸出冊数はほぼ横ばいで、市町村間の相互貸借冊数は増加している。
      • 協力車の巡回を増やすのは現実的ではない。システム的に、現状のままやっていくしかない。しかし、例えば、他の自治体から本が借りられることを知らない人もいるので、PRなど、やれることがあるのではないか。
    2. 研修事業
      • 各種研修会を実施するなど、研修機会の提供を行っている。
    3. 図書館運営相談
      • メール等により質問を受付ているほか、定期的な訪問により、顔の見える関係づくりを行っている。信頼関係が事業の推進力になっている。
  • 「読書県『ちば』」の推進のため、学校図書館支援を行っている。県立高校に対しては、資料の搬送やテーマ別に作成した資料セットの「セット貸出」を行っている。小中学校に対しては、市町村を通じての支援になる。
  • 今後、それぞれの実態に即したきめ細かい支援により、さらに幅広い活動につなげていきたい。


○ シンポジウム:「これからの県立図書館は何をめざすか」

シンポジウムは、コーディネーターが新出さん(白河市立図書館)で、休憩時間に、会場から寄せられた質問に対して、渡邉さん、森谷さん、大槻さんが答える形で行われました。この部分も、私が聞き取れてメモを取った範囲内での記録です。特に、最後のあたりはメモしきれず、かなり曖昧になっています。ご了承ください。

  • [渡邉](表の数字について、ホームページに掲載された資料と本日配布されたが違うことについて)ホームページに掲載されている資料の数字が正しい。
  • [大槻]
    • 研修について。研修は、予算の範囲内で行っている。県立図書館図書手の予算と、千葉県図書館協会の予算がある。講師の依頼は、人のつながりによるものが多い。外部の研修に参加して講師とつながっている。テーマによって、継続して行っている研修もある。対象は、研修のテーマによってまちまち。
    • 学校への広報について。先生たちの研修会でPRを行っている。この方法が、効果が高い。その他、様々な機会を作ってPRを実施するようにしている。
    • 「子ども読書推進センター」は立ち上げたばかり。今まで図書館がやってきた事業を集約した。
  • 質問「水平連携(市町村立図書館間の連携)を強化するよりも、県立図書館が市町村立図書館を支援すべきではないか。県立図書館は、直接サービスを維持しなくても、市町村立図書館支援ができるのではないか。図書館に対する民間のコンサルティングはあり得るか。」
    • [渡邉] 民間のコンサルにはプラスとマイナス、両方があるのではないか。図書館も、直営では問題があるから指定管理になったのではないか。コンサルティングは、図書館職員の能力によると思う。
    • [渡邉] 市町村が持ちきれない資料を県が預かって協力貸出をするという蔵書のバックアップについては、県の税金の使い方として妥当かどうか、費用対効果の有無ということも考えなければならない。単純に考えずに、それぞれの地域によるものではないか。
    • [森谷] 運営相談には、いろいろなレベルのものがあり、県立図書館で手本となる活動をしていないと相談に応じられないと思う。民間のコンサルティングからは、図書館の現場とは違うアドバイスを受けることができるのではないか。
    • [大槻] 県立図書館の資質が大事。そこに、県立図書館の存在価値がある。
    • [渡邉] 民間のコンサルティングはお金が発生する。コンサルティングという形ではないが、民間が図書館の相談にのっているケースは多々あり、民間への依存度が高くなっているのではないか。
  • 質問「県立図書館が直接サービスをする意義について。間接サービスは見えない。また、直接サービスに時間がとられ、協力支援までやり切れない状況もある。」
    • [森谷] 直接サービス(手本となるようなこと)をやっていないと、支援ができないと考える。間接サービスは見えず、知られていないので、県立図書館の存在をアピールできない。見える部分(=直接サービス)をしっかりしていないと、間接サービス(=協力支援)ができないか。
    • [大槻] 郷土資料については、県立図書館の存在価値があると思う。財政が厳しい状況では、削られるのは直接サービスなので、間接サービスの比重が高くならざるを得ないのではないか。
    • [渡邉] 県民全てが県立図書館を利用するわけではない。顔の見えるサービス、県だからできるサービス以外のサービスの比重も高いのではないか。
    • [新] 都立図書館のように、直接サービス(=貸出)をしていない図書館もある。
  • 質問「県内の図書館のネットワークについて。指定管理と直営では条件が異なったりするか。」
    • [森谷] 指定管理の図書館と直営の図書館について、協力貸出については変わらない。ただし、指定管理だと、相手の顔が見えにくく、対応が事務的になってしまうように思う。
  • 質問「県主催の研修について。」
    • [渡邉] 研修の成果が、市町村立図書館にきちんと蓄積・引き継がれているのかどうか。指定管理だと人が代わるので、きちんと引き継がれていないとかがあるのか。
    • [大槻] 指定管理だけでなく、直営もローテーションで人が代わる。何度も繰り返して研修を行うしかない。
    • [森谷] 職員の異動の際に引継は行われているが、蓄積がどれだけあるのかはわからない 。研修には指定管理の図書館も参加している・
    • [大槻] (図書館流通センターなどの)民間の方を研修の講師に呼んだ実績はないと思う。
  • 質問「ネットワークについて。リクエストを個々の図書館で処理しているのは非効率なので、共同保存で対応した方が良いのでは。また、県と市町村で分担収集をして、県全体で出版物のカバー率を上げた方が良いか。」
    • [大槻] 千葉県では、市町村が廃棄する資料が県内に1冊しかない場合は、県立で預かることにしている。収集の分担は特に行っていない。
    • [森谷] 雑誌の共同保存は行っている。図書は行っていない。県内の図書館に対して、県立図書館に持ってほしい本について調査を行ったことがあるが、「専門的な本」という結果になった。大学図書館とも、一部、相互貸借を行っているので、ある程度はカバーできているのではないか。
    • [渡邉] 雑誌の分担収集については、大学図書館の「外国雑誌センター館」が参考になるかもしれない。大学図書館が申し合わせによって、分担して雑誌を収集・提供している。
    • [新] 広島県立図書館では、大学図書館と収集資料がかぶらないようにしている。*1
  • 質問「県域を越えたネットワークについて」
    • [新] 例えば、東海北陸地区には、県立図書館間の定期宅配便があって、県域を越えた相互貸借をやっているが、関東地区では何かやっているか。
    • [大槻] 関ブロ(関東地区公共図書館協議会)がある。県外からの取寄せは、上限冊数を決めている。
    • [森谷] 関ブロで、相互貸借の申し合わせはある。年1回、総会を開催しているが、新たな取組は行っていない。
  • [新] 京都府立図書館の福島さんから質問が寄せられているが、質問を読み上げてもうまく伝わらなさそうなので、直接お願いする。
  • [京都府立図書館・福島]
    • 10年後に県立図書館の機能として何が残るかと聞かれれば、地域情報についての連携になるかと思う。県のリソースを使って、どう地域住民に貢献するかを考えることが必要か。
    • 県の枠組みがあり、県によって文化などが違うが、住民は県境を意識しない。
    • 市町村の図書館の職員がすべて専門職として力をつけたら、県立図書館はいらなくなるのではないか。
  • まとめ
    • [大槻] 市町村立図書館は、もっと県立図書館に働きかけ、県立図書館を使って欲しい。
    • [森谷] 市町村立図書館は、県立図書館の研修にもっと参加して欲しい。県立図書館が、市町村立図書館からのすべての要求に応えるのは難しいかもしれないが、ぜひ声を上げて欲しい。
    • [渡邉] 県の施策の中で、図書館が何ができるのかを考える、構想力が大事だと思う。

*1:資料収集方針広島県立図書館):「本当に専門的なもの」は大学図書館、一般県民から見て「やや高度な内容のもの」や郷土資料は県立図書館、というふうにすみわけをすることとし、…。